「様々な問題を見据えて、人の生活を支える基盤インフラを」
3.11から既に7ヶ月余りが経過した。被災地では一部の地域を除き仮設住宅は、量の面では一応、充足しているが、質や暮らしの面では多くの課題も顕在化している。
これから迎える長い東北の冬、それに向けて断熱改修などが積極的に進んでいるのは朗報であるものの、特に三陸沿岸などでは利便性や生活行動に支障がある立地、独居高齢者の問題など長期化するであろう避難生活の中で、将来の夢へとつなげるためには、ハードだけでは解決する問題は案外少なく、「人のつながり」がいよいよ大切であり、まさに「どう支えあうか・支えるか」、それが問われている。
今回のコンペを通じて、斬新なアイデアが随所に盛り込まれた多くの作品を見させて頂く機会を得たが、それら全ての作品が、今後、起こりえる被災地の様々な問題をしっかり見据え、感じながら、さらなる進化をと願わざるを得ない。人の生活を支える基盤インフラに完成形はない。しかし、それを目指すことが専門家の責務でもある。
(第3回JIA・テスクチャレンジ設計コンペ 審査委員長 鈴木大隆)
■実行委員長からのことば
「設計を目指す若手育成に重点を置く」
JIA北海道支部と外断熱工法を全国展開する㈱テスクの主催するコンペです。
道内で環境に携わる若い設計者の育成と、設計技量の鍛錬を目的とし、過去2回の実績があります。
毎年、時流の風を捉えた、社会性の高いテーマ設定を課題の特徴としており、参加資格は成人であることと、北海道内で建築に関わっていること以外特別な制限を設けず、広く門戸を開いていることや、副賞には海外の研修旅行を用意するなど、設計を目指す若手の育成に重点を置いたプログラムとなっています。
3.11に発生した大震災は多くの尊い犠牲を通して、私たちの社会にさまざまな課題を突きつける結果となりました。今回の課題 <「寒冷地の仮設住宅」持続可能な暮らしに向けて>は、平時には揺らぐことすら疑わなかった「衣、食、住」が瞬時に崩壊し、収束の行方も不透明な今こそ、住に携わる建築家の職能を通して寒冷地における非常時の住まいを考えることを主としています。
(第3回JIA・テスクチャレンジ設計コンペ 実行委員長 山本亜耕)